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「学力」の経済学

恥ずかしながら本書のことも、「教育経済学」という言葉も知らなかったのですが、読んでみると非常に面白い本でした。そんなに分量のある本ではないので、何度も読み返すこともできると思いますが、自分用にメモしておきたいと思います。

  • 経済学がデータを用いて明らかにしている教育や子育てにかんする発見は、教育評論家や子育て専門家の指南やノウハウよりも、よっぽど価値がある。
  • 日本ではまだ、教育政策に科学的な根拠が必要だという考えはほとんど浸透していない。
  • 2001年ブッシュ政権下で成立した「落ちこぼれ防止法」には、実に111回も「科学的根拠に基づく」というフレーズがある。
  • 自治体や政府の報告書の中にやたらと登場するような、「満足しましたか」と子ども自身に聞いたアンケートの調査の集計を「エビデンス(科学的根拠)」と呼ぶこともありません。
  • 「相関関係」があるということは、必ずしも「因果関係」があることを意味しない。
  • 教育投資への収益率は、株や債権などの金融資産への投資などと比べても高いことが、多くの研究で示されている。
  • ご褒美は、「テストの点数」などのアウトプットではなく、「本を読む」「宿題をする」などのインプットに対して与えるべき
  • 学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしている。
  • ほめ方の違いは、子どもたちの取り組み方にも影響を与える。
  • レベルの高すぎるグループに子どもを無理に入れることは、逆効果になる可能性すらある。
  • 習熟度学級は、ピア・エフェクトの効果を高め、特定の学力層の子どもたちだけではなく、全体の学力を押し上げるのに有効な政策
  • もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)
  • ヘックマン教授らは、学力テストでは計測することができない非認知能力が、人生の成長において極めて重要であることを強調している。
  • 高校でよい成績を取る過程で獲得した非認知能力(まじめ、先生との関係がよい、計画性がある、やり抜く力がある、など)は、高校を卒業した後も、彼らを成功に導いた。
  • 非認知能力への投資は、子どもの成功にとって非常に重要であることが多くの研究で示されている。
  • 少人数学級は学力を上昇させる因果効果はあるものの、他の政策と比較すると費用対効果は低い政策である。
  • これまで日本で実施されてきた「少人数学級」や「子ども手当て」は、学力を上げるという政策目標について、費用対効果が低いか効果がないということが、海外のデータを用いた政策評価の中で既に明らかになっている政策である。
  • ある世代の子ども全員を対象にして「平等」に行われた政策は、親の学歴や所得による教育格差を拡大させてしまうことがある。
  • 実験の結果、「子ども手当て」のような補助金は学力の向上には因果効果を持たなかった。
  • データを開示すれば、政府がわざわざ雇用しなくても、世界中の優秀なエコノミストがこぞって分析してくれる
  • 能力が高い教員が教えた場合、子どもたちは1年で1.5学年分の内容を習得できたのに対して、能力の低い教員が教えた場合は、0.5学年分しか習得できなかった。
  • 能力の高い教員は、子どもの遺伝や家庭の資源の不利すらも帳消しにしてしまうほどの影響を持つ
  • 少子化が進んでいく中では、少人数学級によって教員の「数」を増加させることよりも、教員の「質」を高める政策のほうが、教育効果や経済効果が高い可能性があるのではないか。
  • 経済学者の間では教員免許の有無による教員の質の差はかなり小さいというのがコンセンサスになっている。